融資の場面で金融機関が見ているのは、立派な言葉や熱意そのものではなく、「その計画の数字は本当に実現できそうか」という一点です。通る事業計画書には、共通する数字の組み立て方があります。

事業計画書は、金融機関に提出するためだけの書類ではありません。自社がどこへ向かい、そのためにいくら必要で、どうやって返していくのかを、経営者自身が言葉と数字で整理するための道具です。この順序を意識すると、書くべき内容は自然と定まってきます。

まず押さえる4つの軸

数字の部分は、次の4つの軸で組み立てると全体の筋が通ります。順番にも意味があります。

  • 売上根拠——「なぜその売上が立つのか」を数量×単価で説明する
  • 利益計画——売上から原価・経費を引き、いくら残るのかを示す
  • 資金計画——設備・運転資金として、いついくら必要になるのか
  • 返済原資——毎年の利益と減価償却から、返済に回せる額はいくらか

売上根拠は「数量×単価」で語る

最もつまずきやすいのが売上の根拠です。「初年度○千万円を見込む」と結論だけを書いても説得力は生まれません。客数×客単価、あるいは取引先数×平均受注額といった形で分解し、その一つひとつの数字がどこから来ているのかを示します。既存事業の実績や、業界の平均的な水準と照らして無理のない数字であることが伝われば、計画全体の信頼度が一気に上がります。

金融機関が警戒するのは、右肩上がりの一本調子な売上計画です。強気の数字より、根拠のある現実的な数字のほうが評価されます。伸びを描くなら、その伸びの理由まで書き添えることが大切です。

利益計画は「残る額」で見せる

売上の見通しが立ったら、そこから原価と経費を差し引き、最終的にいくら残るのかを示します。ここで大切なのは、経費を過小に見積もらないことです。人件費や家賃、広告費などの固定費に加え、売上の増加に連れて増える変動費も織り込みます。楽観的すぎる利益計画は、かえって「コスト意識が甘い」という印象を与えかねません。むしろ経費をやや厚めに見ておき、それでも黒字が残る計画のほうが、金融機関には堅実な事業として伝わります。売上・原価・経費・利益の関係を一枚の表に落とし込み、初年度から3年程度の推移を示せると、事業の伸びと収益性の両方が一目で伝わります。

返済原資まで一本の線でつなぐ

見落とされがちなのが返済原資の説明です。融資の審査は突き詰めれば「貸したお金がきちんと返ってくるか」の判断です。毎年の税引後利益に減価償却費を足し戻した額が、返済に充てられる原資のおおよその目安になります。ここが年間の返済予定額を上回っていれば、無理なく返せる計画だと読み取ってもらえます。売上根拠から利益、そして返済原資までが一本の線でつながっているかを、提出前に必ず確認してください。

資金繰りと予実管理まで見据える

事業計画書は作って終わりではなく、融資実行後に「計画どおり進んでいるか」を見ていくための出発点です。月々の資金の動きは資金繰り表の作り方で、計画と実績のズレの捉え方は経営に使う3つの数字の考え方とあわせて整えていくと、数字が経営判断の道具として機能し始めます。計画づくりから金融機関対応、その後の予実管理までを伴走する財務伴走プランもご用意しています。

なお、税務上の取り扱いや個別の融資可否は状況によって異なります。具体的な判断は顧問税理士や取引金融機関にご相談ください。本コラムは一般的な考え方の整理を目的としています。

鵜飼颯大

この記事を書いた人

鵜飼 颯大株式会社ChronoArt 代表取締役 / 公認会計士

監査法人で上場企業監査・IPO支援に従事後、中小企業の外部CFOとして決算早期化・資金調達・予実管理・財務改善を支援。数字に基づく経営の実装を専門とする。プロフィール →

コラム一覧に戻る