損益計算書が黒字でも、手元のお金が尽きれば会社は続けられません。その「お金の動き」を1枚で見える化する道具が資金繰り表です。作り方の手順と、銀行融資の場面で金融機関がどこを見ているかを整理します。

資金繰り表とは、月ごとの入金・出金・手元資金残高をまとめた表です。試算表が「利益」を示すのに対し、資金繰り表は「現金」を示します。売上の入金は翌月末、仕入の支払いは当月末——といった入出金のタイミングのずれは損益計算書には現れないため、利益が出ていても資金が足りなくなることは十分に起こり得ます。

資金繰り表の基本構成

難しく考える必要はありません。月次の資金繰り表は、おおむね次の要素で構成されます。

  • 前月繰越(月初の現預金残高)
  • 経常収入(売上入金・その他の入金)
  • 経常支出(仕入・外注費・人件費・家賃・経費など)
  • 財務収支(借入金の調達・返済)
  • 翌月繰越(月末の現預金残高)

まずはExcelやスプレッドシートで、実績3か月+予測3〜6か月の表を作るところから始めるのが現実的です。予測部分は、受注状況や過去の入出金パターンをもとに「入金は保守的に、支出は漏れなく」見積もるのが基本です。

作り方の3ステップ

1. 入出金の実績を通帳ベースで拾う

最初の1回は、直近3か月の預金通帳(またはネットバンキングの明細)から入出金を項目ごとに集計します。会計データではなく通帳から始めるのは、資金繰り表が「現金の動き」を扱う表だからです。

2. 入出金のサイト(タイミング)を整理する

得意先ごとの回収条件(締め日・入金日)、仕入先ごとの支払条件、給与・社会保険料・借入返済・税金の支払月を一覧にします。この整理だけでも、資金が薄くなる月がどこかが見えてきます。

3. 予測を入れて毎月更新する

受注・請求の見込みから今後3〜6か月の入出金を予測し、月が締まるたびに実績で置き換えて予測をずらしていきます。資金繰り表は一度作って終わりではなく、月次で回して初めて機能します。この運用は月次決算の早期化とセットで整えると無理がありません。

銀行が資金繰り表のどこを見るか

融資の相談や既存借入の折衝の場面で、金融機関から資金繰り表の提出を求められることがあります。一般に、次のような点が見られていると言われます。

  • 返済原資があるか——経常収支(本業の入出金差額)がプラスで、借入返済を賄えているか
  • 資金使途と調達額が整合しているか——何のためにいくら必要か、根拠が表と結びついているか
  • 予測に根拠があるか——売上入金の見込みが受注や過去実績と整合しているか
  • 資金が薄くなる時期を経営者が把握しているか——質問に自分の言葉で答えられるか
銀行が見ているのは表の綺麗さではなく、「経営者が自社の資金の動きを把握しているか」です。毎月更新された資金繰り表を自分の言葉で説明できること自体が、金融機関からの信頼につながります。

続けるための現実的な工夫

資金繰り表が続かない最大の原因は、作成の手間です。会計データや通帳明細の整理を仕組み化し、毎月同じ手順で更新できる形をつくることが定着の近道です。「どんぶり経営」から抜け出す第一歩でも触れたとおり、資金繰りは中小企業がまず整えるべき数字の筆頭です。自社だけで運用が難しい場合は、ChronoArtの月次管理サポートのように、外部の伴走者と一緒に型をつくる方法もあります。

鵜飼颯大

この記事を書いた人

鵜飼 颯大株式会社ChronoArt 代表取締役 / 公認会計士

監査法人で上場企業監査・IPO支援に従事後、中小企業の外部CFOとして決算早期化・資金調達・予実管理・財務改善を支援。数字に基づく経営の実装を専門とする。プロフィール →

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