予実管理とは、立てた予算(計画)と実際の実績を突き合わせ、そのズレの理由を確かめて次の行動につなげる仕組みです。難しく構える必要はなく、まずは月次で「予算・実績・差異」を並べて眺めるところから始められます。

予算をつくること自体が目的になってしまい、期末に「結局どうだったか」を振り返って終わり——という会社は少なくありません。予実管理の価値は、期の途中で差異に気づき、まだ打ち手が残っているうちに軌道修正できる点にあります。

まずは予算を「使える粒度」でつくる

精緻な予算より、毎月比べられる予算のほうが実務では役立ちます。売上・売上原価・主要な経費・利益といった、経営者が見たい科目に絞って月別に置くだけでも十分に機能します。年間の目標を12で割るのではなく、季節性のある事業なら繁忙・閑散の波を反映させると、差異の意味が読み取りやすくなります。予算の土台となる数字の組み立て方は事業計画書の書き方もあわせてご覧ください。

実績と並べ、差異を3つの視点で見る

月次決算が固まったら、予算と実績、そしてその差額(差異)を同じ表に並べます。差異を見るときは、次の3点を意識すると原因にたどり着きやすくなります。

  • 金額の大きい差異から見る(小さなズレは後回しでよい)
  • 売上の差異は「単価」と「数量」のどちらが動いたかで分ける
  • 費用の差異は「使いすぎ」か「時期のズレ」かを区別する

実績を固めるのに時間がかかると、差異に気づく頃には打ち手が限られがちです。月次決算のスピードに課題がある場合は月次決算に時間がかかる会社の共通点が参考になります。理想は、翌月の早い時期に前月の予実がそろい、まだ動ける時間が十分に残っている状態です。

差異は金額だけで判断せず、率(達成率や増減率)でも見ると印象が変わることがあります。金額が小さくても率で見ると大きく外れている科目には、翌月以降に効いてくる兆候が隠れていることがあるためです。

差異を「次の一手」に変える

予実管理の本番は、差異を見つけた後です。売上が未達なら販促や見込み案件の見直し、原価が超過なら仕入・外注条件の点検、といった具体的な行動に落とし込みます。逆に予算を上回った月も、なぜ伸びたのかを言語化しておくと、その要因を意図的に再現できるようになります。ここで大切なのは、差異を犯人探しに使わないことです。数字は責めるためではなく、次の判断を良くするための材料として扱います。

予算はあくまで前提を置いた見通しです。事業環境が変われば、期中で予算そのものを見直す判断も必要になります。予実管理は「予算を守らせる」ためではなく、「より良い意思決定を続ける」ための仕組みだと捉えると、うまく回り始めます。

続けられる仕組みにする

予実管理は、一度作って終わりではなく毎月回してこそ価値が出ます。最初から完璧な様式を目指すより、既存の会計データから出せる範囲で表を作り、毎月同じ形で続けることのほうが大切です。回すうちに「この科目はもっと細かく見たい」といった改善点が自然と見えてきます。

とはいえ、経理・月次決算・差異分析・金融機関への説明までを社内だけで担うのは負担が大きいのも実情です。ChronoArtでは、月次のリズムづくりから差異分析、次の打ち手の整理までを財務伴走プランで伴走しています。まずは自社の予算と実績を並べてみることから、無理のない範囲で始めてみてください。

鵜飼颯大

この記事を書いた人

鵜飼 颯大株式会社ChronoArt 代表取締役 / 公認会計士

監査法人で上場企業監査・IPO支援に従事後、中小企業の外部CFOとして決算早期化・資金調達・予実管理・財務改善を支援。数字に基づく経営の実装を専門とする。プロフィール →

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